【聖堂朝礼】わすれないで

 暑さはだいぶ和らぎましたね。窓を開けると、セミの声は殆ど聞かれなくなって、代わりにこおろぎが鳴いているのが聞こえてきます。正門の桜の落ち葉は黄色くなっていて、中には赤くなってきた葉もありました。だんだんに秋になっていくのが目にも耳にも感じられるようになりました。皆さんの毎日も、秋の涼しさのように、落ち着いてきたことでしょう。これからも、手を何度でも洗うことや、お行儀よく食事をすることなどに気をつけて、落ち着いて過ごしましょう。

 

 さて、数日前に決勝戦が行われた全米オープンテニスで、大坂なおみ選手が優勝しました。そのプレーは見事でしたが、この大会で大坂さんは、試合ごとに違う人の名前が書かれたマスクをつけてコートに現れました。名前を書かれた人はそれぞれ、理不尽なことで殺された黒人です。一つひとつを今くわしくお伝えはしませんが、アメリカではいきなりピストルで撃たれたり、首を押さえられて息を止められたりした黒人が何人もいました。なぜそんなことになったのか、はっきりした理由が見当たらないままに命を落とすことになりました。黒人だから、というのは理由になるはずもありません。その人たちの名前を、見ている人たちに分かるように、大坂さんは毎試合マスクに書いていました。

 決勝戦のあとの表彰式で、大坂さんはインタビューを受けました。「そのマスクに、どんなメッセージを込めていたのですか?」という質問に対して大阪さんは、「あなたはどんなメッセージを受け取りましたか?」と聞き返しました。それこそがメッセージです。

 一人ひとりに考えてほしい、名前を見て出来事を思い出し、忘れないで世界中の一人ひとりに考えてほしい、ということでしょう。インタビューした人だけでなく、私たちも考えるきっかけをもらいました。名前がある、ということは、愛される存在である、ということだからです。

 

 今週の聖歌「わすれないで」。今は大勢が集まった時に声に出して歌うことができないから、放送ではメロディーだけを聞いて心の中で歌っていますが、歌詞を思い出して、その意味を丁寧に受け取ってほしいと思います。

 いつもイエスさまは 君のことを 見つめている。

 その通り、元気な日でも不機嫌な日でも、いつもイエスさまは見て励ましてくださっています。

 だからいつも たやさないで 胸の中の ほほえみを。

そう、ほほえんでいたい私がいます。でもできなくなる日もあります。

はげしい嵐が 君のほほえみ 吹き消すでしょう

だからいつも 離さないで 胸の中の みことばを

イエスさまが伝えてくださったみことばが、わたしたちの心の中にありますね。そしてこの歌の最後には、こうあります。

だからすぐに 取り戻して いつもの君の ほほえみを

 

 それができるように、神さまは私たちをおつくりくださいました。まず隣の人に、身近な人に、胸の中のほほえみを届けましょう。その人は、名前のある、愛される存在です。胸の中のほほえみを言葉にするなら「ありがとう」「ごめんなさい」が素直に出てきます。そんな私たちをイエスさまはきっと、ほほえみの中に見つめていてくださるでしょう。

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