手を差し伸べる

今年の「親睦の集い」は晴天に恵まれ、賑やかさがあふれる中にあって、温かく穏やかな集いとなりました。丁寧に準備が整えられた会場は前夜の強風で大変な状態でしたが、朝早くから復旧に力を注いでくださり、おかげさまで素晴らしい集いとなりました。心より感謝申し上げます。

全てが終わり、ほとんどの方が帰られた後、あるお母様がピロティにこぼれた飲み物の跡に気づき、ご自分のティッシュを取り出して丁寧に拭き掃除をなさっていました。また、あるお母様はペットボトルや缶、紙ごみが混在してしまったごみ袋に手を入れて、ひっそりと分別を始められました。誰かがやってくれるだろうと見て見ぬふりをするのではなく、ドミニコ家族のために自分から手を差し伸べる。こんな方々の細やかな心遣いと温かい思いやりに包まれて学園は支えられているのだと、頭の下がる思いでした。

この集いの次の登校日、お弁当を忘れてしまった子が続出しました。早めに気づいてお届けくださったご家庭もありましたが、小さい子ほど、直前まで忘れたことに気づけません。数人であれば対応できますが、十数人となると大変です。どうしたものかと頭を抱えていたところ、給食室からお弁当が届けられました。私は予備の食材を用いて作られたのだとばかり思っていましたが、実は調理員の皆さんが、ご自分の昼食を提供してくださっていたのです。子どもたちに笑顔が戻り、先生方も安堵し、でもその裏では、昼食そのものを差し出してくださった方々の犠牲がそこにあったことを後から知りました。毎日厨房で汗を流している皆さんは、子どもたちと顔を合わせることはあまりありません。それでも、困っている様子を耳にして手を差し伸べる。これほどの慈愛の眼差しが、このキャンパスにはあるのです。

バチカンではこの10月に、家庭についてのシノドス(世界代表司教会議)が開かれていました。この期間中に、教皇フランシスコは一般向けのミサの中で、「イエスの眼差しで子どもたちを見つめることによってだけ、私たちが家庭を守ることが人類を守ることになることを真に理解できるのです」と呼びかけられました。人々を温かさの中に包み込むイエスの愛の眼差しによって、そこにやすらぎとやさしさが生まれる。人類愛を真に理解できるのは、愛の眼差しにあふれた家族愛による。この教皇の呼びかけから振り返れば、学園という家庭を大切にしてくださる方々の行動は、それが小さなことであっても、平和への、人類愛への大きな一歩になっていることがわかります。

さまざまな行事や毎日の暮らしを通して感じられる学園の温かさは、私たちが大きな一つの家族、家庭となっている証であり、実りです。その家族にある幸せを今、改めて感じています。

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