聖母月

 5月はマリア様の月です。春の訪れとともに、四季の中で自然界の実りをもっとも感じさせてくれるのが5月です。そして主の復活の喜びと希望に満ちた月でもあります。マリア様は人間でありながら、神様の特別な恵みを受けて救い主・キリストの母となるために選ばれました。神様に心からの従順を示し、キリスト信者の生き方の模範として、さらに神様に取り次いでくれる助け主として特別に崇められてきました。そのような思いをもってこの月をマリア様にささげ、祈ることが伝統として行われてきました。

 昨年度は休校期間中で初めての試みでしたが、先生方の熱意と協力、工夫による映像でのマリア祭を行うことができました。今年度も例年通り行えない中で、どのようにできるか先生方が考えながら、よいマリア祭となるように準備しています。

 マリア様の名前を聞くと私は美術が専門ですので、「ピエタ」や「聖母子像」が浮かんできます。中でも「受胎告知」の絵画が印象的です。読書しているマリア様に、天から降り立つ天使ガブリエルが神様のメッセージを伝えるシーンです。その知らせを聞き、マリア様は驚いていたり、戸惑っていたりと作品によって違いがありますが、どの表情も思い詰めている様子です。それぞれの作品には、その時起こった一瞬の緊張感が漂っています。

 では受胎告知は、聖書でどのように書かれているでしょうか。

 このおとめはダビデ家のヨセフという人のいいなずけで、名をマリアと言った。み使いは彼女のところに来て、「恵まれた者、喜びなさい。主はあなたとともにおられます」と言った。この言葉を聞いて、マリアは胸騒ぎがし、このあいさつは何の事であろうかと思いまどった。すると、み使いは言った。「マリア、恐れてはなりません。あなたは神から恵みをいただいたのです。あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。その名をイエズスとつけなさい。彼は偉大な者となり、いと高きおん者の子と呼ばれます。(中略)・・・そこでマリアは、「私は主のはしためです。おことばどおり、この身になりますように」と答えた。 (ルカによる福音書12638

 ガブリエルの言葉はアヴェ・マリアの祈りの「アヴェ・マリア、恵みに満ちた方、主はあなたとともにおられます」の個所です。その言葉を聞き、マリア様は”胸騒ぎ”が起きます。私たちに同じことが起こったとしたらどうでしょう。驚き、恐れ、戸惑ってしまい冷静に物事を考えることは難しいでしょう。そして神さまの子どもを産み、育てるなどとても受け入れられないと断るでしょうか。しかし、マリア様は神様を心から信じて、運命を受け入れ、ゆだねています。神様は、私たちにとって最善のことを計画しておられます。自分が予想していないことでも、そこに何か意味があり、自分の使命があるのです。

 耐えられないような試練にあなたがたを遭わせるようなことはなさらず、むしろ、耐えることができるように、試練とともに抜け出る道をも用意してくださるのです。(コリント人への第一の手紙1013

 「なぜ自分がこんなことをしなければならないのか」と思うことも、それに一生懸命に取り組むことで、その時には想像しなかった何かに気づくはずです。つまり同じ事象でも、自分自身の受け止め方で、大きく結果が変わってきます。物事には良い面と悪い面が必ずあります。悪い面ばかり見てしまうとそのことは悪いことになり、いい面だけ見ると良いことになります。自分の物事の見方が変われば、目の前の世界が変わって見えてくるでしょう。私たちもマリア様に倣い、「神さまのお言葉の通りに」という気持ちでチャレンジしていきましょう。

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