静かさの その先に

 5月並みの気温の日もあれば真冬の寒さに戻る日もあって戸惑います。この繰り返しを通して少しずつ春が近づいてくるのでしょう。

 緊急事態宣言の解除はまだ難しい様子です。行事の見通しが立てづらく、何かと滞りがちなのは街でも学校でも同じですが、今は何より、最前線にいらっしゃる医療従事者の方々に休養の日が訪れますようにと祈ります。

 東日本大震災から10年。この節目に心を新たにして防災対策をと思っていた矢先、2月13日に福島県沖を震源とする強い地震がありました。東京も大きく揺れましたが被災地の方々にとってどれほど心細かったでしょうか。あの大震災は過去のことではなく、私たちはまさに今その時代に生かされているのだとあらためて思います。

  おにぎり献金へのご協力をありがとうございます。献金先の一つであるカリタスジャパンは「大震災から最低10年間は被災地を支える」と宣言してこれまで活動を続けてきました。今後も形を変えての支援は続くことでしょう。被災された方々にとって一番つらいのは「忘れられてしまうこと」と聞いています。私たちも息長く支援したいと思います。

 支援拠点の一つに「カリタス南相馬」があります。発足当初はボランティア活動の受け入れ窓口となるなど、カトリック東京教区が中心となって支え続けた拠点です。少しずつ復旧が進む中で支援の形はその都度新しくなり、今は仮設住宅にお住まいの方や家族と離れてしまった方などの交流拠点としての機能も加え、教会ボランティアから一般社団法人へと形を変えて、十年の間にすっかり地域に溶け込みました。しかしながら、コロナ禍にあってボランティアへの宿泊提供を中止、さらには「密」を招かないために地域の方々の交流も休止することとなりました。

  その上に、先日の地震ではこの地域が最も強い揺れに見舞われました。地震と津波と放射線、そしてコロナ禍。福島の方々のご苦労を思い、またあの場所の静かさを思います。

  思い返せば10年前のあの日あの時、低学年のスクールバスは子どもたちを各駅に送り届けた直後でした。3年生以上は教室で終礼の最中。けが人が出なかったことは幸いでした。先生方はオートバイや自動車で各駅に向かい、近隣にお住まいの元教員も最寄りの改札に駆けつけました。すでに電車に乗った子どもたちは隣の駅で電車から降ろされてしまいましたが、駅までお迎えのお母さまがお一人でそこにいるすべての子どもたちを引き受けて守ってくださり、スクールバスが再度お迎えに行くことができました。

  二子玉川駅から歩いて学校に戻ってきた子どもたちもいました。「ただいま!」という元気な声にどれほど励まされたでしょうか。電話が通じない中で、在校の子どもたちは家族のお迎えをひたすらに待ちました。守衛さんも運転手さんも徹夜で正門に立ち、お迎えのご家族を労ってくださいました。

  何もできなくなった年度末。余震に怯えながらも卒業式だけは行われ、静かな春休みに入っていきました。

  この「静かさ」を再び味わったのが昨年3月・4月のことでした。それから一年経った今、私たちは「新しい日常」を構築しきれないまま年度末を迎えます。思い描いていた毎日ではなかったかもしれません。それでも子どもたちは「今」を笑顔で過ごし、日々のマラソンで周回数を足し算するように、確かに前に進んでいます。いつも子どもたちが希望の光を灯してくれる、そう実感しています。

  この1年、皆様から頂いた温かな寄り添いと後押しに、心より感謝申し上げます。

  今年のカレンダーでは春休みの最後に四旬節が終わり、新年度始業式の前日が「復活の主日」。ご復活のお祝いは、古い自分を脱ぎ捨てて新しくなる喜びのうちにあります。できなかった日々を数えるのではなく、今の積み重ねを充実させて、子どもたちとともに新しくなる喜びを大事にしたいと思います。

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