特別に、そして新しく

 梅雨空の下で紫陽花が咲き誇る、自然の変わらぬ営みに心が安らぎます。新型ウイルスの感染の勢いがまだまだ残る中で、日本の社会は少しずつリズムを取り戻そうとしています。しかし海外では感染がさらに拡大している地域もあり、全世界での感染者は1000万人を超え、亡くなられた方も50万人を超えてしまいました。引き続き注意しなければなりません。ともにお祈りくださいませ。

 地域によって違いはありますが、人々が動けなかった数週間の間は、地球が少しだけ元気を取り戻したようです。インドの都市からエベレストが目視できるほどに空の青さがよみがえったり、底の見えなかった川が澄んで魚が戻ってきたり。そんなニュースをいくつも耳にしました。暮らしの便利さを求めるがために空の汚れや水の濁りを仕方ないものとして黙過していたけれど、地球家族の本来の姿を目にして気づかされたことがいくつもありました。私たちはすべてのいのちとつながっているのです。

 長い自粛期間の、負の側面が多く語られる中で、新聞の投書欄には若者たちが「今」を前向きに捉えようとしている様子が書き記されていました。「自分で計画的に時間を使うことが大切」「今まで後回しにしてきたことは、もったいなかった」「家族が自分を守ってくれていることを強く感じた」など、現状を受け止めつつ一歩前に歩み出そうとしているようすが感じられ、頼もしく思いました。

 世の中では今「新しい生活様式」が語られていますが、その内容は自粛期間の留意事項を日常のものとして継続的に行うことが求められているとも言えます。これからは単に「元通り」を目指すのではなく、新しいやり方を探っていくことになるでしょう。今月からはレジ袋が有料化されますが、廃棄物削減に向けた動きもまた、新しい生活様式としての定着が求められています。

 そういえば私たちはこの十数年、生活様式の変化をいくつも目の当たりにしてきました。

 インターネットを活用することで電話連絡網が不要になりました。電車やバスでもコンビニでも、ICカードを利用できます。自宅にいても、通信販売や宅配により希望の物を入手するのが「普通」になりました。

 そして何より、気候の変化や大震災の影響に伴う暮らしの知恵はすっかり変わり、例えば働く人々の服装も変わりました。それらを戸惑いながらもその都度受け入れ、生かしてきて、私たちの今につながっています。

 小学校では6月初めから分散登校を始め、「特別な生活様式」を展開することとなりました。久しぶりに登校した子どもたちの様子を見て、先生方は健康面をまず心配していましたが、日を追うごとに笑顔が戻り、安堵しています。昇降口での登下校時の手指消毒も手慣れたものになってきました。マスクの着用や水筒持参など、今は「特別」ですが、時期が来たら「新しい」生活様式として定着するのでしょう。

 また車での送迎が一時的に増えることを予想して、駐車場では保護者の皆様にご協力いただき、朝の時間帯にドライブスルー形式をとって周辺道路に渋滞が起きないように試みています。こちらの「特別」は時期が来たら終了しますが、降車した児童が駐車場入口から正門に向かうのではなく、出口から通用門経由でキャンパスに入ることが有効打になると気づきました。特に雨天時には効果的です。

 暑さの増す7月。小学校ではもうしばらく分散登校が続きます。今年の夏休みの短さは「特別」ですが、計画的に時間を使うことを心がけるよい機会と言えます。大変ですが、子どもたちが今を受け止めて一歩を踏み出せるよう、お支えいただければ幸いです。

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