ご一緒しましょう

 6月29日の15時11分、「田園都市線が運転見合わせ」という緊急メールが届きました。別室で会議中だった私に負担がかからないよう、先生方はすぐに対応を始めてくれました。「15時5分、駒沢大学~桜新町間の線路内安全確認」という表現だけでは詳細がつかめず、とりあえず復旧までの間、残っている上級生たちを学校で待機させることにしました。

 しかし時間的に、1・2年生はすでに用賀駅から乗車しているはず。車内に閉じ込められているだろうと予想し、無事を祈るばかりでした。しばらくして、上り線のトンネル内で、天井まで届くほどに地下から水が噴き出していたと知り、暗いトンネルに停止した列車内で過ごした子どもたちは、さぞかし不安で一杯だったろうと思います。

 ここで予想外だったのは、上り線の列車が用賀駅に戻ってきたことでした。登下校をいつも見守ってくださる守衛さんが事態に気づいて駅で対応してくださり、子どもたちを守ってくださいました。遅ればせながらも、自転車で駅に向かってくれた先生のおかげで、学校でも詳しい状況をつかむことができました。学校にいったん戻ることにした児童もありました。

 運転見合わせから1時間半以上たった16時45分に運行が再開され、学校待機組は先生方と一緒にスクールバスで駅に向かいました。学校で長く待たされたことにも不平を言わず、笑顔で過ごしてくれた子どもたちのたくましさに成長を感じ、感心しました。

 そんな中で何よりありがたかったのは、情報が少ない中、機転を利かせて用賀駅までお迎えに来てくださった保護者が何人もいてくださったことです。そしてその方々が子どもたちを慰め、よそのお子さんも一緒に連れ帰ることをお申し出くださったことです。学校の行き届かない面を快く補ってくださり、おかげさまで、用賀駅で待機した子どもたちは比較的短時間のうちに家路に着くことができました。さらに、駅に居合わせた他のカトリック学校のお子さんが2人いたのですが、幼稚園でのお知り合いだったこともあり、ご一緒しましょう、と引き取ってくださったのでした。温かく細やかなご対応に改めて感謝申し上げます。

 駅での対応を終えて戻ってきた先生の報告を聞いて安堵していた頃、教員室の電話が鳴りました。他校のお子さんのご家庭からの、お礼のお電話でした。すぐにご連絡をくださった方のお心遣いにも安らぎを覚えました。

 今回の出来事を通して、他者への思いやりを行動に移すことの積み重ねの先に「平和」が生まれること、その平和は「もたらされる」のではなく「築いていく」ものだと強く感じました。

 平和を実現する人々は幸いである

 その人たちは神の子と呼ばれる

 (マタイ 五章)

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