聖人列伝 -ドミニコ会の聖人・福者のご紹介-

聖アントニノ(イタリア)

 聖アントニノは1389年、イタリアのフィレンツェに生まれました。青年時代にドミニコ会に入会しましたが、その時すでに教会の「教令集」全部を暗記していたということです。修練期は2月18日に記念する福者フラ・ジョヴァンニ・ンジェリコと同期でした。
 彼は15世紀のドミニコ会改革運動の推進者のひとりであった福者ヨハネ・ドミニチの弟子で、間もなく責任ある立場に置かれ、コルトナ、ナポリ、ローマと続けて院長になり、各修道院で非常に賢明、かつ断固として働き、規則遵守の旗じるしを掲げました。フィレンツェに戻ると改革派の有名なサン・マルコ修道院を創立し、院長となりました。ここはルネッサンスの精神性と文化の中心となっていきました。初めて修道院外の人々にも開かれた図書室は、その建築様式からも、キリスト教以外の蔵書の多さからも有名です。同時にこの修道院の創立に関わった福者フラ・ジョヴァンニ・アンジェリコは、この修道院を非常に精神性の高いフレスコ画で満たしました。
 1446年、聖アントニノは、その知恵と司牧熱心のためにフィレンツェの大司教に選ばれましたが、司教として慎重で「助言者アントニノ」と呼ばれたように、良き助言者であったとともに、貧しい人々に対する彼の憐れみは非常なものでした。自己を捨てた愛の人、司牧者、教理の教え手、とくに説教者として強靭かつ慎重に働く司教の模範でした。
 1459年5月2日、70歳を迎える年、永遠の報いへと旅立ちました。遺体はサン・マルコ聖堂に埋葬されていて、人々から崇敬を受けています。1524年、教皇クレメンス7世により列聖されました。

文/理事長 武田教子