聞こえる言葉を心に

 新年明けましておめでとうございます。東京の元旦は穏やかなお天気に恵まれ、静かに2020年を迎えました。

 クリスマスを挟んで2週間余りの冬休み、子どもたちにとってはご家族やご親戚とゆったり過ごせる貴重な日々だったことでしょう。

 さて、クリスマスの飾りが残されている教会では、1月の最初の日曜日に「主の公現」=主イエスが公に姿を現されたことを記念します。その象徴は、クリスマス会での聖劇にあるように東方の博士の来訪、礼拝です。天使のお告げによってご降誕を知り、お祝いに出向いた羊飼いと違い、博士たちは占星術の研究のうちに星に導かれ、エルサレムを経由してベツレヘムに向かいました。「すべての人の救い主」として神さまから遣わされた幼子イエス。ユダヤ地方の人からすれば博士たちは東方のペルシャ地方から訪れた外国人ですが、闇の中で輝く星の光に招かれ、飼い葉桶に寝かされた幼子イエスに宝物をお捧げすることができました。これは、神さまは分け隔てなく人を大切になさるということが公に示された出来事です。

 使徒パウロは神さまの「秘められた計画」について、「異邦人が福音によってキリストイエスにおいて、約束されたものを私たちと一緒に受け継ぐ者、同じ体に属する者、同じ約束にあずかる者となるということ」と書簡に残しています。主イエスを通して国家や民族によらず誰もがつながり、神さまに大切にされていると感じることこそが、クリスマスの喜びです。

 この日のミサで神父様は「クリスマスの喜びを自分だけのものにしないでください」と説教されました。神さまのご計画によるクリスマスは、私だけ、仲間内だけ、教会の中だけ、学校の中だけ、と内向きに囲うのではなく、すべての人を照らす光に与った喜びなのだということを、忘れずに皆と分かち合いたいものです。

 続けて神父様は「教皇フランシスコの来日を単なるイベントで終わらせてはいけません」とも語られました。「すべてのいのちを守るため」というテーマでの来日でしたが、教皇ご自身はバチカンに戻られてからも広島・長崎での被爆者の証言を取り上げられて、「過去の教訓に丁寧に敬意を持って耳を傾けることを通して、新しい希望の炎をともすことができる」と、世界平和の日(1月1日)のメッセージを発信され、単なるイベントではなかったことを証しされています。

 新しく始まった年が、子どもたちにとって明るいものであるよう願います。悲しい出来事がいくつも報道される中、「この先はどうなるのか」と心配になりますが、「私はどうするのがよいのか」と大人がまず自分事で考えて、聞こえる言葉を心に留め、語る言葉を未来に向けて紡いでいきたいと思います。

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