まるごと心で受け止める

 暑さも少し和らいで、2学期が始まりました。それぞれの夏休み、大自然に触れて神さまのお恵みを感じられたことと思います。8月は台風や降り続く豪雨などで、特に九州・四国地方には大きな被害があり、今も復旧していないところが多くあります。ご無事をお祈りしたいと思います。

 私自身、8月上旬にカトリック学校の長崎五島での研修と巡礼に出かけましたが、予約していた羽田発の便が台風8号の影響で欠航となり、戸惑いました。幸い振替便に空席があり数時間の遅れで済みましたが、参加者全員が顔を合わせられたのは2日目の朝、福江島に渡る船の出発20分前。集まれただけでも有り難いと感じました。

 昨年に世界遺産に登録された潜伏キリシタンの教会や集落を巡りながら、当時の方々の暮らし、思い、願いに思いを馳せる4日間。導いてくださったガイドの方は私たちに「教会の建物の美しさ、荘厳さに触れて満足されるかもしれませんが、ここで祈られた方々の思いを皆さんの心で感じ取ってください」と話され、行く先々で静かな時間を確保してくださいました。本やパンフレットを「読んで知ること」は皆同じでも、「そこにいて感じること」は一人ひとり違います。その場に流れる空気をまるごと感じ取り、それぞれに祈るひと時を過ごしてきました。

 下旬には全国の私立小学校の先生方との研修があり、その最終日に数学者で横浜国立大学の根上生也副学長のご講演を伺いました。初めに言われたのは「先生方は熱心だからメモを取りたがるけれど、それよりも私の話の全体の印象を心で捉えてください」ということでした。確かに私たちはメモを取り、情報を整頓してまとめることが習い性になっていて、心を脇に置いているかもしれません。また根上先生は、何をしたいか分からなくなった大学生には「小学生時代を思い出しなさい」と伝えるそうです。心で捉えていた頃を、という意味でしょう。

 読書して予習を済ませ、メモを取って整頓し、次の生活に生かすことは大切です。身につけてほしい習慣でもあります。しかし小さな頃は、その場で感じている心のときめきが、次の学びの糧になっています。出来事をまるごと受け止める子どもの心の柔らかさは、神さまからの贈り物です。

 学園祭や運動会などの大きな行事が続く2学期。それぞれの行事はゴールでもあり、また子どもにとっては学びのきっかけを得るスタートでもあります。友達や先生、おうちの方の応援を、まるごと心で受け止めている子どもたちの存在は、私たち大人にとって学びの糧、生きる喜びになっています。

 神さまが私たちをそのまま包んでくださるように、子どもをまるごと受け止める大人でありたい。日頃を反省しつつ、そう感じた夏でした。

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