子どもたちの歌声から

 猛暑だ酷暑だと言っていた日々を忘れてしまうほどに、秋が急ぎ足で訪れました。桜の葉が散り始め、キャンパスに金木犀の香りが爽やかな風に乗って漂い始めると、学園の秋を感じます。

 先日は学園祭にお越しくださり、ありがとうございました。たくさんの温かい拍手をいただいて、子どもたちには大いなる励みとなりました。展示作品やステージ発表、クラブ活動などから、子どもたちの日頃の積み重ねをお感じいただけたと思います。テーマのとおり、新しい風に乗って未来へ羽ばたく一人ひとりの熱心な取り組みがありました。また先生方の長期にわたる計画と多様な準備、そして何より、励まし送り出してくださったご家庭の温かさがあってこその学園祭でした。また、2日間を終えての片づけでは、卒業生男子の数名が最後まで残り、暗くなるまで作業を手伝ってくれたことも申し添えておきます。

 全校合唱では、今年初めて習った曲もあれば、毎回歌う定番の曲もありました。練習を聞くたびに感心していたのは、新曲はもちろんのこと、前回と同じ曲に対しても手を抜かず、まっすぐに練習に取り組んだ子どもたちの姿です。年々上手になっていく姿に、同じ曲で同じ子の声だけれども同じではない、今だから聞ける歌声の素晴らしさにこれまでの積み重ねを感じました。どの歌も、時の流れの中で私たちの心の風景に溶け込んで、未来への希望を抱くとともに、これまでの振り返りのひとときにもなりました。

 聞いてくださったご家族もまた、今の声を聞くことで、あの時あの日、あの頃の声を、そしてあの日々を、懐かしく思い出されたのではないでしょうか。前回や前々回の学園祭での活躍、入学したての頃の戸惑い、入学試験に向かう日の期待と不安、そして、神さまから新しいいのちを授かり、出会った日の喜び。「生まれてきてくれた」喜びと感謝、「元気に育ってほしい」という願いと祈り。誰もが「この子」を思って祈り、寄り添ってきたことでしょう。

 そして同様に私たち大人の誰にも、自分のために祈ってくれた人がいて、寄り添ってもらい、蒔かれた愛の種をいただいて、今を生かされています。

 

 たねをまこう 愛のたねをまこう

 (中略)

 そして 恵みの水をそそごう

 いのちのちから 信じて

 やがて祈りは届き

 ある朝 たねは芽吹くだろう

 

 全校合唱で子どもたちが新たに習った曲の一節が、「今の声」とともに心に残りました。この子たちがいつの日か、たねを蒔ける人として育つように、恵みの水を注ぐ人となるように。今、ご一緒に祈りたいと思います。

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