折り鶴

 6月18日の大阪北部地震は、震度6弱という強い揺れでした。人口の多い大都市では、それだけ被害が大きくなります。今回、家屋の倒壊が比較的に少なかったのは、揺れ方が「極短周期」だったから、とされています。それでも避難生活を強いられている方々が多くいらっしゃることを心に留めておきたいと思います。

 その地震の三日後に、私はカトリックの全国研修で大阪に行きました。余震に見舞われる可能性を覚悟して、日頃は使わないリュックを背負い、水のボトルも入れて出かけました。

 幸い、大阪城の南側に位置する会場周辺は大丈夫でしたが、西日本の先生方のお話では、すでに登校している児童、登校途中で動けなくなった児童などさまざまな状況の中、安否確認に追われ、またご家族のお迎えを待つ児童の安全確保で大変だったとのこと。そして、安全点検に万全を期すため翌日を休校にした学校がいくつもあったそうです。

 東京に戻ってみると、校舎の廊下のセンターラインに折り鶴が一定の間隔で整然と並べられていました。廊下での事故防止を目指し、児童会は全校児童に向けて実にスマートな呼びかけをしました。おにぎり献金の日に、児童会が体育館朝礼で呼びかけた後、奉仕活動の時間に折り鶴は設置されました。

 とはいえ、気をつけているつもりでもうっかり踏んでしまう子(や先生)もいて、午後にはいくつかの折り鶴が痛々しい姿になってしまいます。それを見越していたのか、児童会では折り鶴をたくさん用意していました。そして毎日放課後に点検し、迅速に補修・交換をしてくれるので、朝にはまた、空港の滑走路に降り立った旅客機のように美しい姿を取り戻しています。

 丁寧で細やかなメンテナンスが奏功して、児童会が折り鶴に託した安全・安心のメッセージは、確かに子どもたちの心に届いています。週明けには、「廊下を走っちゃだめだよ」「右側通行をしましょう」と互いに声を掛け合う低学年児童の姿が見られるようになりました。

 児童会のメンバーは恐らく、いろいろな事例を熱心に調べ、今の自分たちにできる方法を選んだのでしょう。教師の強制ではなく、子どもたちの調べ学習から発展した実践を、まことに頼もしく思います。そして、上級生の呼びかけをまっすぐに受け取っている低学年の素直さもまた、嬉しいものです。

 まもなく夏休みに入ります。旅行に出かけることもあるでしょう。出かける先の足元に折り鶴は見られませんが、私たちの安全・安心のために使命感を持って、私たちの目に見えないところで迅速な補修や安全点検をしてくださっている方々のご尽力を素直に受け取り、心の目で折り鶴を見つけて、感謝の心を持って過ごせますように。

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