見えないところで黙々と

 ピョンチャンオリンピックが終わりました。日本の選手の活躍が毎日のように伝えられ、感動と喜びを分けてもらいました。こうした大会では、メダルの色と数が大きく報道されますが、華やかさの陰で、多くの競技でさまざまな国の選手の隠れた努力が精一杯の花を咲かせた、その一人ひとりの活躍にこそ目を留めたいものです。そしてまもなく始まるパラリンピックも、無事終わるように祈りましょう。

 さて、2月は逃げると言われる通り、インフルエンザによる学校閉鎖が明けた小学校では、公開授業をはじめとして、ラグビーやクラブ活動での交流試合、学年ごとの社会科見学、2年生のドミニコ郵便局、「トラの恩返し」観劇、クラブ発表会等々、目まぐるしくも充実した日々でした。そして今、あっという間に年度末を迎えました。

 灰の水曜日から始まった四旬節、神さまに心を向け直して静かに祈るこの時期のうち、3月19日は聖ヨセフを記念する日です。

 聖書を開けば聖母マリアにまつわる場面は多く記述されていますが、聖父ヨセフに関する記述は殆どありません。けれども、「沈黙の聖人」と呼ばれるヨセフは、見えないところで黙々と、大いなる働きをしていたのです。

 許嫁であるマリアの受胎を知った時、ヨセフは悩み、葛藤したことでしょう。マタイによる福音書には「夫ヨセフは正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに離縁しようと決心した」とあります。マリアに塁が及ばないように、相手の立場に立ち、何が最もふさわしいかを考えました。そこに天使が夢に現れ、「妻マリアを家に迎え入れるのを恐れるな」と伝えます。ヨセフは自分の考えを脇に置き、神の言葉通りにマリアを迎え入れます。ヨセフは、沈黙のうちにイエスの存在を最初に信じ、受け容れた人といえます。

 その後も天使のお告げに従い、ヘロデの虐殺から逃れるためにエジプトへ向かい、またエルサレムへの帰還にも危険を感じてナザレへと家族を導き、守り通しました。そしてイエスを「人の子」として育てる父親の役割を担い、夫として黙々とマリアを支えました。聖書の記述からは見えませんが、静かな力強い働きがそこにありました。

 東日本大震災から7年が経ちます。避難生活から戻れない方々も多くあるものの、被災した地域の復興は少しずつ前進しています。見えないところで黙々と、地道な努力を続けてくださる方々への祈りを忘れてはなりません。

 四旬節の期間中に聖ヨセフの記念日があることは、私たちの日々を振り返る大切なきっかけとなります。この一年、隠れたところで大きな力をくださった多くの方々を思い起こし、感謝の心を携えて、4月1日の復活祭に向かってともに歩んでまいりましょう。

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