積み重ねの先に

「先生、これ、あげる」

帰りがけの1年生が、ドングリを渡してくれました。自分の手で秋を見つけた喜びを、笑顔で分けてくれました。

同じ日に、6年生が近寄ってきて、

「オシロイバナの種を拾いました。先生、ご自宅のお庭にどうぞ」

いや、我が家に庭はないのだよ、と答えると、

「植木鉢で育ちますよ」

とにっこり。その丁寧な言葉遣いと気配りに、学びの積み重ねを感じました。

 教員室の窓から聞こえていた蝉の声は気がつけば鈴虫の合唱に変わり、いよいよ秋の訪れです。キャンパスは今、金木犀の香りに包まれ、これからは一雨ごとに秋が深まるのでしょう。

 過日は学園祭にお越しくださり、ありがとうございました。台風18号と秋雨前線の影響を受けたものの、無事に終えることができました。心から感謝申し上げます。展示でもステージでもクラブ発表でも、子どもたちの発信をまっすぐに受け止めてくださり、温かな眼差しとたくさんの拍手を頂戴して、子どもたちにはもちろん、教職員にも大いなる励みとなりました。

 2日間を終えて、展示会場の片づけを2人の卒業生が最後まで手伝ってくれました。懐かしさもあったことでしょうが、先生方の手足となって汗をかくことを厭わない姿に感心し、感謝しました。この奉仕も、聖ドミニコに倣った学びの積み重ねの実りと言えます。

 さて、私たちは無事でしたが、その期間に台風の進路にあたった日本の各地で風雨による被害が相次ぎ、また遠くメキシコでは大地震に見舞われて多くの犠牲者が出ました。さらに、核兵器を巡る国家指導者の応酬も一向に止む気配が見られず、対話の積み重ねに背を向けている様子を残念に思います。

 昇降口の吹き抜けには今、学園祭で出品された5年生の作品「ロザリオ」が飾られています。「ロザリオの月」である10月。この特大のロザリオが、聖母マリアへの祈りを促してくれます。

 ロザリオの祈りは本来、「聖母マリアへの祈り」を繰り返し唱えながら、主イエスの生涯を黙想していく祈り。ですから「平和の君」である主イエスへの取り成しを願う「平和の祈り」にもなります。春秋五月号でもお伝えしたように、100年前の5月、ファティマに現れた聖母は、3人の少年少女に第一次世界大戦の終結を願ってロザリオの祈りを捧げるように伝えました。その祈りの積み重ねは、今も求められているのではないでしょうか。

学園祭で4年生が伝えてくれました。

「もう一度考え直して。自分勝手に生きればそれでいいの? 自分だけが正しいと思っているの? 私たちは同じこの村の子どもじゃないの」

 同じ地球に生きる私たちに安らぎが訪れるよう、自分だけでなく相手を思う対話と祈りを積み重ねたいものです。

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