習い、倣う者として

日焼けした肌も落ち着き、一回り大きくなった子どもたちが学校に帰ってきました。互いに声を掛け合う表情からは、充実した夏休みを過ごした様子が感じられます。たくさん届いた暑中見舞いには「平泳ぎで1000メートルの記録を更新して褒められました」「バレエの発表会におじいちゃんがきてくれます」などと書かれ、ご家族とともに過ごす喜びの中で、心の栄養をたくさん蓄えることができたようです。

国内外での悲しい事件や大事故のニュースを聞くにつけ、たとえ暑苦しい日が続いても普通に暮らせる私たちの毎日は、それが当たり前なのではなく、幸せなことだと改めて思いました。そして私たち一人ひとりは、その幸せを分かち合える家族、友達、ドミニコファミリーの一人なのだということを、学期の初めに子どもたちと確かめ合いたいものです。

さて、夏休み中にカトリック小学校の先生方を対象とする研修がありました。毎年行われていますが、今年は戦後七十年を節目として、戦前・戦中・戦後のカトリック学校がどのように時代に対応していったかを一つ一つ振り返って検証し、今後を考えていくものでした。南山大学教授をなさっているシスター三好が講師を務めてくださり、豊富な資料を基に、丁寧にお話しくださいました。

明治時代のはじめの頃、カトリックの神父様やシスター方は、社会の底辺で苦しむ人々に目を向け、特に子どもたちの救済に力を注ぎました。その子たちが大きくなるに従い、進学先として学校が整えていきます。この時期は、日本という国がはっきりと形作られてはいませんでした。国づくりの困難もあったのでしょう、教育体制は「国のため」に整備されていきます。その頃からすべての学校の道徳教育が「国家のために」整えらていく中で、対話のない体制となって昭和の時代を迎えます。カトリック学校も巻き込まれ、児童生徒を守り学校を存続させるために、大変な困難を味わいました。そんな歴史の波を越えて、戦後はさらに多くのカトリック学校が生まれ、よりはっきりと「隣人のために」よく生きる力をつけられるよう、注力しています。

史実から学び、神様のみ心に倣うこのシスターの謙虚な姿勢は、日頃私たちが「教える」立場にいるとしても、「習い、倣う」者として生きる大切さを伝えきる後ろ姿でもありました。

7月期の保護者会でお配りした「戦後70年司教団メッセージ」にある通り、普通に暮らせる毎日の平和は、対話を軸に築きあげられています。

目に映るすべてのことは神さまからのメッセージ。その呼びかけに応え、他者との対話を大切にして謙虚に習い、倣う姿をもって、子どもたちの良いモデルとなるよう、大人である私たちが習い、倣ってまいりましょう。

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